量子コンピュータ関連株への投資を考え始めたとき、多くの人がこう感じます。「そもそも量子コンピュータがどういうものかちんぷんかんぷん」「勉強しようとして本を買ったが、仕組みの話ばかりで、結局どの企業に投資すればいいのかわからなかった」。
本記事は、投資判断に必要な知識をどう身につけるかという観点から、読む順番とあわせて4冊を紹介する「学び方の案内」です。量子コンピュータを深く理解することが目的ではありません。「どこに投資できるか」「どんな企業がこの産業を担っているか」を把握するために、どんな本をどの順に読むべきかを整理します。
この記事で紹介する「学びのルート」
まず全体のルートを示します。
- 量子コンピュータビジネスの全体像をつかむ:産業・企業・ビジネスの全体像を把握する
- 量子コンピュータのしくみを理解する:量子コンピュータしくみをもっと知りたくなったとき
- 量子論の教養本:量子コンピュータのしくみが「よくわからない」と感じたとき
すべての人が①から④まで読む必要はありません。投資判断に必要な知識の深さに応じて、どこで止まるかが変わります。その判断基準も、それぞれの本の紹介の中で説明します。
量子コンピュータ本の「よくある問題」
量子コンピュータに関する本の多くは、仕組みの解説に大半のページを使っています。量子ビット、重ね合わせ、量子もつれ……読み終わっても「それで、どの企業が強いの?」「どう儲かるの?」という疑問が残る本が少なくありません。
投資家に必要なのは、物理学者になることではありません。「誰がどのような立場でこの産業に関わっているか」「どの企業に注目すべきか」「どういうリスクがあるか」を把握することです。その観点で、以下の4冊を選んでいます。
まず全体像をつかむ【最初に読む1冊】
① 量子コンピュータまるわかり(日経文庫)
間瀬英之・身野良寛 著 / 日本経済新聞出版 / 2023年12月
著者は日本総合研究所の研究員で、量子コンピュータ産業の全体像を「ビジネス」の視点でまとめた数少ない本です。
ほとんどの量子コンピュータ本が「仕組みの説明」に力を入れる中、本書は国内外の注目企業、各国政府の政策、活用事例、ビジネス現場での取り組みまでをコンパクトにカバーしています。「量子コンピュータで誰が何をしているか」を俯瞰したいときに、これ以上の入門書はなかなかありません。
2023年発売ですので、企業の最新動向や株価情報については当然古くなっています。しかし産業の全体構造や企業の役割分担、活用領域の基礎知識は今もそのまま通用します。「まず全体をざっくり把握したい」という段階では、2026年現在でもこの本を最初の1冊として推薦できます。
この1冊で十分な人:量子コンピュータの産業全体をざっくり把握し、関連銘柄の名前や事業内容を理解できれば十分という人は、①だけで投資の入口として必要な知識は得られます。
しくみも理解したい人へ【踏み込む前に読む1冊】
② 教養としての量子コンピュータ
藤井啓祐 著 / ダイヤモンド社 / 2025年11月
著者は大阪大学教授・量子コンピュータの第一線研究者である藤井啓祐氏。発売直後に重版、Amazonランキング物理学カテゴリ1位を獲得した2025年の注目書です。
②を読むべきタイミング:「量子チップを開発するハードウェア企業でどの会社を選ぶか」といった踏み込んだ検討をしたい場合、量子コンピュータのしくみの理解は避けて通れません。各ハードウェア方式(超電導・イオントラップ・中性原子・光)がなぜ異なるのか、エラー訂正とは何かを理解していないと、企業間の技術的な優劣を自分の目で評価することが難しくなります。
本書は100点以上のイラストを使い、数式なしで量子力学の歴史から量子コンピュータの各方式、国際競争の現状まで解説しています。「まるわかり」で全体像をつかんだ後、より深く理解したい段階で読む1冊として最適です。
ただし、本書はあくまで「教養書」です。量子論については、量子コンピュータへの接続を意識したざっくりとした説明にとどまっている部分があります。②を読んでみて「量子論のところがよくわからない」「もっと納得感を持って理解したい」と感じたら、次の③または④を読むことをおすすめします。
②でつまずいた人へ【量子論の背景知識として読む2冊】
②を読んで「シュレーディンガーの猫の話は出てきたが、結局よくわからなかった」「量子論の部分でついていけなくなった」という場合、量子論・量子力学の基礎知識が不足している可能性があります。
量子論の教養本を1冊読んでおくことで、②の内容もぐっと理解しやすくなります。数式は不要です。目安は「シュレーディンガーの猫の説明を読んで、おおよそ納得できる」水準です。それが達成できれば、②も読みこなせるようになります。
以下の2冊はいずれも数式を使わず、読みやすい教養書として長く売れ続けている定番書です。どちらか1冊で構いません。
③ 「量子論」を楽しむ本(PHP文庫)
佐藤勝彦 監修 / PHP文庫
宇宙物理学者・東京大学名誉教授の佐藤勝彦氏監修。量子論の誕生から「シュレーディンガーの猫」「ハイゼンベルクの不確定性原理」まで、図解と物語形式でわかりやすく解説した定番の入門書です。文庫で手軽に読め、量子の世界の考え方を「イメージ」として身につけるのに適しています。
④ 眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話
久富隆佑・やまざきれきしゅう 著 / 日本文芸社 / 2024年11月
東京工業大学・東京大学大学院出身の著者と、国際基督教大学准教授(量子エレクトロニクス専門)の共著。イラスト図解を多用した超入門書です。「量子とは何か」からはじまり、量子力学が現代技術にどうつながるかまでをビジュアルで丁寧に解説しています。活字よりも図解で理解したいタイプの方に特におすすめです。
4冊の読む順番まとめ
| 本 | 読むタイミング |
|---|---|
| ① 量子コンピュータまるわかり(日経文庫) | 最初の1冊。産業・企業・ビジネスの全体像を把握する |
| ② 教養としての量子コンピュータ | ①を読んでしくみをもっと理解したくなったとき |
| ③、④ 量子論の教養本(どちらか1冊) | ②を読んで量子論の部分でつまずいたと感じたとき |
「さらに深く理解したい」と思ったら
たとえば「IonQとRigettiが開発している量子コンピュータは技術的にどう違うのか」をはっきり理解しようとすると、①〜④の範囲を超えた、より理系的な知識が必要になります。
本でそこまで学ぼうとすると、数式の出てくる本格的な量子力学・量子コンピュータの専門書が必要になり、学習の難易度が一気に上がります。投資家の多くにとってそこまでの深さは必須ではなく、本よりも手軽に最新情報を得られるネット記事やニュースで補う方が現実的です。
本ブログでは、各企業・各技術の解説を投資家の視点からわかりやすく取り上げています。①の本で全体像を把握した後は、本ブログのような専門サイトや量子コンピュータの最新ニュースを定期的に追うことで、実用的な投資判断の知識を継続的にアップデートしていくことができます。
純粋に量子コンピュータのしくみに興味がある人はどの順で読む?
ここまでは投資家向けの読み方を中心に説明してきましたが、「投資はともかく、量子コンピュータそのものが面白そう」という人には、順番が変わります。
まず②から読むのがおすすめです。①はビジネス書の色が強く、しくみの面白さよりも産業の全体像を整理することに重きを置いています。科学としての量子コンピュータに純粋に興味があるなら、②の方が読んでいて面白いはずです。産業の背景が気になったら、②を読んだ後で①に戻れば十分です。
時間に余裕がある人には、③または④→②→①という順も良い選択です。量子コンピュータのしくみの面白さの核心は量子論にあります。量子コンピュータに興味があるということは、量子論そのものも面白いと感じられるはずです。量子論の教養本で「ミクロの世界の不思議さ」を先に楽しんでから②を読むと、②の内容がずっと深く理解できます。背景知識がある状態で読む②は、ない状態で読むより何倍も面白くなります。
最初の1冊が大事な理由
いくら量子コンピュータに興味があっても、最初から何冊も読もうと意気込んで取り組むのはしんどいものです。途中で読むのが苦になったり、難しくて挫折したりしやすい。
だからこそ最初に手に取る本が大事で、それは「自分がどういう目的でこの分野を学ぶのか」によって変わります。
投資判断の知識が欲しいなら①から。量子コンピュータのしくみを楽しみたいなら②から。量子論の不思議さから入りたいなら③または④から。——目的に合った入口を選ぶことが、学びを続けるための一番の近道です。

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